嘱託医からのページ
メッセージ
健診のすすめ
今年度の特定健診が始まっています。被保険者の方々の受診率はほぼ100%ですが、被扶養者および任意継続被保険者の方々の受診率は昨年度で60.7%でした。年々増加していますが、国の定めた目標値は80%です。シオノギの健診は、がん検診を加えることが可能です。たとえば、糖尿病は、血管病を起こしやすいことは知られていますが、がんにもかかりやすくなるのをご存じでしょうか?すでにかかりつけ医がいらっしゃる方も、そうでない方も、ぜひ、受診してください。
禁煙
昨年度のシオノギ全体での喫煙率は17.1%でした。20%を切っているのは優れていますが、もうひと頑張り。喫煙は、20種類以上のがん、血管病、肺炎や慢性閉塞性肺疾患(COPD)を増やします。
医療情報
『チーム医療の重要性』〜多抗血栓薬時代のチーム医療〜
現代の医療はあらゆる場面でチーム医療が重要です。今回は、抗血栓薬といういわゆる”血をサラサラにする”お薬をめぐるチーム医療について述べたいと思います。現在は、このようなお薬を服用している方が多く、中には2〜3種類を飲まれている方がいらっしゃいます。どういった場合にこのようなお薬を飲むのでしょうか?
動脈硬化が原因で起こってくるのが心筋梗塞や脳梗塞などの血管病です。血栓が血管を詰めてしまうので、血をサラサラにするお薬が使われます。特に、最近では、カテーテルを用いて狭くなった血管を風船で広げると同時に金属のステントを血管に留置することが多くなっています。ステント留置直後から、約1年間は抗血栓薬を複数服用することが推奨されています。
次に、心房細動という不整脈における血栓予防が挙げられます。心房細動は、左心房で血流が滞り血栓を作りやすくなります。この血栓が脳梗塞を引き起こすと、特に予後が悪いと言われています。心房細動は、年齢とともに頻度が増え、80歳以上では人口の10%近くの方がおもちだといわれています。心房細動が見つかると、脳梗塞予防に抗凝固薬が、ほとんどの場合投与されます。昔は、ワルファリンという調節の難しいお薬1種類しかなかったのですが、最近は調節不要のお薬が出てきたので、多く使われるようになりました。
それ以外に、エコノミークラス症候群という名称で以前ご紹介した下肢の深部静脈血栓が挙げられます。この血栓は、足→心臓→肺動脈と移動し、肺動脈で詰まります。突然死を引き起こすような重症例もあり、また、整形外科や産婦人科の手術後の安静臥床が原因になることがあり、院内で起こりやすい病気です。したがって、その予防や治療に抗血栓薬が多く使われることになります。
以上のように、抗血栓薬が多く使われるようになっていますが、数種類の抗血栓薬を飲んでいる方々は、出血しやすい状態になっています。抜歯の際、胃カメラなどの検査を受ける際、もっと大がかりな手術を受ける際などは、必ず抗血栓薬を処方している医師と連携をとってもらいましょう。抗凝固薬は、続行が不可欠な場合もあれば、中断が可能な場合まで、状況に応じて異なります。また、中断する時期も薬の種類によって異なります。
出血が予想される医療行為のみならず、抗血栓薬を複数内服していると、脳出血などが起こりやすくなると予想されます。しかし、今まで十分な警鐘が鳴らされていませんでした。いま、医療現場ではさまざまな取り組みがなされています。ステント留置後の抗血栓薬投与の期間をできるだけ短くしようと臨床試験が進行中です。また、脳出血に大きく関与するのは高血圧なので、複数の抗凝固薬を内服されている方に対しては、特に厳格な血圧コントロールを目指しています。なかでも、病院同士あるいは病院と診療所の連携はチーム医療の柱です。