特定健診と
保健指導
特定健診、いわゆる「メタボ健診」が始まったのは、2008年です。心筋梗塞や脳梗塞といった血管病の予防を目的として、わが国が国策として取り組んでいます。特定健診の結果をもとに、心血管病のリスクが高い方について、運動や食事といった生活習慣の改善を指導するのが、保健指導です。現在、対象者には、セイコーエプソン社の活動量計を用いた指導を実施しています。実施対象の約60%の方々に参加していただいています。
重症化予防
保健指導は、すでに治療中の方は対象になりません。そこで、当健保では、糖尿病と高血圧で治療中の方において、重症化を予防する対策を行っています。主治医や産業医と連絡をとりながら、栄養指導や受診勧奨などでサポートしています。
禁煙
喫煙は、最高のリスク因子です。血管病や癌のみならず、閉塞性肺疾患(COPD)や嚥下性肺炎の原因です。いま一度、禁煙をお考えください。被保険者の方には、継続して、禁煙治療に補助を行っています。
特定健診と
保健指導
わが国の高齢化は世界一です。65歳以上の人口に対する割合(高齢化率)は、昨年10月でわが国は27.3%で最も高率です。高齢化率が7%を超えると高齢化社会、14%を超えると高齢社会、21%を超えると超高齢社会と呼びます。日本は、人類史上初めて超高齢社会を迎えた国ですが、高齢化率の年次推移を見ると驚くことがわかります。1985年の高齢化率はわずか10%で、30年間で高齢化率は2.5倍以上も増加しています。ほかには類をみない急速な高齢化です。この急速な変化は、特に循環器疾患の構造を大きく変えました。循環器病棟の入院患者の平均年齢がどんどん高くなり、その原因疾患で最も多いのは、心不全による入院です。心不全は、慢性化してあらゆる心臓病の終末像ととらえることができ、高齢化とともに急増します。疫学研究では、50代における慢性心不全発症頻度は1%に対し、80歳以上になると10%といわれています。心不全罹患患者は、本邦で推定100万人とされ、現代は心不全パンデミックの時代と呼ばれています。パンデミックとは、もともと感染症の流行を示す言葉ですが、現在のわが国の急激な心不全患者数の増加は、まさにパンデミックと呼んで警鐘が鳴らされているわけです。
心不全の典型的な症状は、体動による息切れで、心不全になると動けなくなります。ますます筋力が衰え、食欲が損なわれます。筋肉量の低下が生じ、フレイルと呼ばれる虚弱状態になります。特に高齢者では、栄養不足や嚥下障害が進み誤嚥性肺炎を起こす、という悪循環になります。現在、死因の2位は心臓病=心不全ですが、実は3位の肺炎の大半が誤嚥性肺炎とされています。このように、高齢心不全は予後が不良です。
高齢心不全は、1/3の方が退院後1年以内に再入院するとされています。入退院ごとに身体活動度が低下していきます。治療の主眼は、再入院を防ぐことと、入院中に活動度を落とさないことです。入院当初から、多くの職種がかかわる心臓リハビリが重要となってきます。再入院予防には、在宅でのケアが重要ですので、かかりつけ医、在宅医療、介護サービスなど地域包括ケアとの連携が不可欠になってきます。このように高齢心不全は、現代医療が取り組む最大の課題であり、その医療の質が大きく問われています。