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嘱託医からのメッセージと医療情報

メッセージ

1.「血管病を防ぐ」わが国の健康戦略

特定健診(いわゆるメタボ健診)・保健指導・重症化予防は、わが国が国策として取り組む健康施策で、心筋梗塞や脳卒中といった血管病および人工透析が必要になるような重症疾患の予防を目的としています。血圧や血中コレステロールが高くても、症状はほとんどありません。健診を受けて、早めに対処をしましょう。血管病を起こしやすい危険因子を見つけて、是正し、重症化を防ぐ。今までの経験知が確実に成果を出しています。どうぞ安心してお受けください。

2. 禁煙

喫煙が、健康被害をもたらすのは疑うことのない事実です。被保険者の方には、継続して、禁煙治療に補助を行っています。今からでも遅くありません。ぜひ禁煙をお考えください。

医療情報

「人工知能(AI)と医療」

AI(人工知能)はさまざまな分野で活用されています。医療においては、心電図の解析に最も早期に導入され、すでに実診療に大いに活用されています。AIの得意な分野は、データの認識、予測、最適化だと言われています。心電図においては、AIによってデジタル化された心電図波形データを認識して診断まで出しますが、循環器専門医に較べるとまだ少し劣っているように感じます。しかし、AIには圧倒的なデータ処理速度があり、AIと医師の協働によって飛躍的に心電図診断の効率がアップしています。
最近注目を集めるAIとしては、問診に利用されている例があります。頭痛外来に特化したものでは、従来の1/3の時間で、また、医師の問診で抜ける可能性がある陰性所見(その症状がないということが診断に役立つもの)が電子カルテ上に表示される。電子カルテになり、医師が患者と目を合わせる時間が減少したと言われる対策にもなると期待されています。中には、病院に来る前にスマホから入力してもらうようなアプリも開発されていますし、また、従来は得られなかった診療を評価する患者満足度もアウトカム(※1)としてデータを残せるようになってきています。
AIによる画像診断の補助は、医療で最も期待されている分野です。アメリカ合衆国では国として15種類のAI医療機器が承認されています。その中には、内視鏡診断や、網膜症を検出するようなAIがあります。
画像診断以外で注目されているのが、機械学習や深層学習を用いたデータ解析です。たとえば、腕につけるウェアラブル機器によって、非侵襲(※2)で24時間、脈拍数や体動などをはじめ数多くの指標を蓄積することができます。そのデータを、たとえば、うつ病がある人とそうでない人を比較すると、AIでのみ検出できる違いが見つかります。もしかすると、それはうつ病の診断、さらには発症前の段階で予測できるかもしれません。しかし、AIが選ぶ指標は、理論的には説明がつかない可能性があります。これは、AIのブラックボックス問題と言われ、医師が実臨床として用いる際の障壁であろうと考えられています。なぜなら、医師が患者さんにわかりやすく説明できないからです。しかし、一方、ベテラン医師がもつ、これも説明できないような暗黙知(※3)が、ひょっとするとAIを用いて利用可能なものになる可能性も期待されています。

今、国際学会では、AIを用いた発表が多く見られるようになっています。特にGoogleを代表とするIT企業が、医療分野での研究を爆発的に促進しています。ただし、医療データはデジタル化されると容易に国境を超えるとされるので、今後、新たな医療格差を生む可能性があり、また倫理的・法的・社会的課題(ELISIと略される)の検討が必要と考えられています。医療界におけるAIの進歩は本当に楽しみです。

(※1) アウトカム:結果、成果
(※2) 非侵襲(ひしんしゅう):生体を傷つけないこと
(※3) 暗黙知:過去の経験から成り立つ主観的な知識

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