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嘱託医からのメッセージと医療情報

新型コロナウイルスについて

みなさん、新型コロナウイルス感染拡大が継続し、毎日の生活も一変、大変窮屈な日々をお過ごしのことと思います。なによりも今は、いかにこのウイルスの感染拡大を防いで共生していくかが、一番の主眼になります。そこで今回は、最重要事項であるこのウイルスに関して述べたいと思います。
もともとヒトコロナウイルスは感冒の原因となるウイルスとして知られていました。ウイルスはヒトの細胞に入って自分の遺伝子を増幅します。遺伝情報はご存じのようにDNAとRNAがありますが、コロナウイルスはインフルエンザと同じく、1本鎖のRNA ウイルスです。中心にRNAが位置する球形のウイルスで、周りをエンベロープという膜が覆っています。そのエンベロープにスパイク蛋白という突起がついています。
感染という現象は、このスパイク蛋白がヒトの細胞表面にあるレセプター(ACE2)と結合し、細胞内に侵入することによって生じます。エンベロープは脂質でできているので、ウイルスは石鹸やアルコールで容易に壊されます。そのため、特に新型コロナウイルスには、石鹸と流水での手洗いとアルコールによる手指消毒が、非常に有効です。
このウイルスは2003年に中国を中心に流行したSARSウイルスと構造が似ていることから、SARS-CoV-2と名付けられました。また、この感染症はCOVID-19(コロナウイルス感染症2019)と呼ばれています。
新型コロナウイルスは、エアロゾル状態で3時間、プラスチックやステンレス上で3日間、マスクの表面では7日間も安定であると報告されています。これまで、マスクはインフルエンザ流行時にも使われていましたが、インフルエンザに罹患した人から他人への感染は防ぐが、それ以外はあまり重要視されていませんでした。ところが、最近になり、このウイルスは鼻汁よりも唾液に多く含まれることが多く(したがって、真正面で対談したり、会食するとリスクが高い)、また症状がでる前から感染力があり、感染力のピークは症状発現より前ということがわかってきました。インフルエンザとは明らかに異なります。また、感染しても無症状・軽症が80%というのもインフルエンザとは異なります。以上から、このCOVID-19では、フィジカル(ソーシャル)ディスタンス、マスクが非常に重要で、すでに多くの科学的検証がされています。
ACE2と呼ばれるレセプターですが、気道や肺胞上皮のみならず、口腔粘膜、唾液腺、嗅上皮、血管内皮、小腸上皮などにも存在することがわかっています。そのため、この感染症の症状には、咳以外に嗅覚障害などが認められるのが特徴です。また、血管を障害するために、心筋梗塞や脳梗塞、静脈血栓などの循環器障害を伴うのも大きな特徴です。一時、ある種類の降圧薬が上で述べたレセプターであるACE2を増やすのでCOVID-19に対して不利であるような噂が流れましたが、完全に否定されていますので、どうぞご安心ください。
これから第2波の到来が予想されますが、第1波での各国の死亡率に大きな差が認められました。我が国を含む東アジア諸国は、他の地域に比べて人口当たりの死亡者が少なく、その理由が推察されています。有力なのは、マスクの装着や室内では靴を脱ぐといった生活習慣、ハグやキスなどの接触が少ないこと、言語自体に破裂音が少なく唾液拡散が少ないこと、BCG接種が義務付けられていることなどがあげられています。BCGは結核菌に対する免疫療法なのですが、結核菌のみならずウイルス全般にも対応する自然免疫を高める効果があると報告され、注目されています。

以上、新型コロナ感染に対して、まず第1報をお送りします。繰り返しになりますが、重要なことは、マスクをする、手洗い、手指消毒です。
基本を忠実に、明けない夜はありません。
(2020年7月寄稿)

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